正解は一つではない

 ほどきのとっとの夏は、ほとんど毎日プールに入ります。大きさは縦約3メートル、横約2メートルと、家庭用プールにしてはそこそこ大きい物です。多いときで4~5人の子どもたちが水遊びを楽しみます。プールは充分広いようでも、毎年のようにプールの中での遊び方や、スペースの使い方で言い合いが起こります。

 先日も、スーパーボールや浮き輪などたくさんの物を入れて遊びたい人と、しっかり泳ぎたい人でいざこざが起こりました。

 さて、こんな時、あなたならどう解決を図りますか?

 私は、こんな調子だとつまらないから、「プールを前半、後半に分けて、2~3人の少ない人数にすること」しか思いつきませんでした。しかしそれには子どもたちに、プールの使い方を相談して、本当にそのやり方でいいかどうか確認しなければなりません。納得ができるだろうかと迷っていました。

 数日後、そのいざこざの中にいたやまとくんを家まで迎えに行きました。やまとくんもやはり気にしていて「プールってもめるよな」と話し始めました。なんでそうなるのかと聞くと、「狭いからじゃないかな。もっと大きなプールにしたらいいんじゃない?」と言いました。まあそう思うよな~と思いつつ、「どうすればいいと思う?」と聞いてみました。するとやまとくんはこう続けました。「遊び方が違うんだよ。思いっきり泳ぎたい人もいれば、いろんな道具を使って遊びたい人もいるでしょ。」

「わかった!みんなで一緒にできる楽しいことしたらいいんじゃないか?」

この答え、すごいと思いませんか?揉めてる人とも、楽しくできることをすれば一緒に遊べちゃう。そんな答えを思いつく大人はどれくらいいるでしょうか?

やまとくんは確かに、プールの中で「ぐるぐる洗濯機しようで~」と声をかけています。遊びの途中にいいタイミングでみんなに呼び掛けています。これはやまとくんなりの楽しく遊ぶための工夫だったんだなと知ることができ、感動と衝撃を受けました。

 

 私の持っていた答えは「分ける」ことでした。でも、やまとくんの答えは「取り込む」ことです。この大きな違いに、はっとさせられました。自分にとっての居心地のいい場所には、何一つ嫌なことはないし、我慢できないことが一つも起こらないなんてそんなことはないわけで、現状や環境を変えるのは難しいこともたくさんあって、人がいればその分だけ考え方や感じ方も違います。もういいやとそこから離れることもできるし、違う場所を見つけることもできます。でも、少しだけ“どうすればいいか”と考えることで、働きかけることもできるし、もしかしたら自分や周りの人の思いや行動を変えられるかもしれません。そしてインクルーシブってこういうことなんじゃないかと気付かされました。子どもたちと一緒に過ごすことで、自分一人では気づけなかったような深い学びを与えてもらっています。この夏、子どもたちと一緒に、このいざこざを乗り越えることはできるのでしょうか。。。

 

 答えは、一つではない。思いもよらなかったところに解決策が見えてくる。そんな出来事が起こるかもしれないとわくわくしています。(とりかい)

プール掃除の前に、残った水の中で広々涼むアマガエル。

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