遊びの求心性

 先月頃から個人的に夢中になっている遊びに、「缶蹴りオニごっこ」があります。読んで字のごとく、缶蹴りとオニごっこを組み合わせた遊びです。一般的な缶蹴りは、オニ役と逃げる役に分かれ、オニが隠れている人を探して見つけたら、「○○ちゃん、見つけた!」と言って缶を踏みに行きます。逃げる側はオニに缶を踏まれる前に缶を蹴りに行きます。対して缶蹴りオニごっこは、オニが逃げる人を見つけた後、缶ではなく、オニごっこのようにタッチすることで捕まえることができます。

 タッチされた人は、「牢屋(ろうや)」と呼ばれるスペースに入ります。牢屋の人は、まだ逃げている人からタッチされると、牢屋から逃げ出すことができます。オニが全員をタッチして牢屋に入れない限り、逃げる側は誰もが逃げ出せるチャンスがあります。

 この缶蹴りオニごっこ。割とシンプルな遊びなのですが、まあ~楽しくて、「缶蹴りオニご、しよ!」とよく子ども達を誘っています。オニ側も逃げる側もチームで作戦を話したり、「作戦なし!」という作戦を話したりしながら、子どもも大人も全力で逃げる、隠れる、捕まえる。誰がどこから飛び出して来るのか分からず、一瞬で勝負が決まることもあるため、常にドキドキハラハラしながら走り回ります。

 私だけでなく、子ども達も楽しそうにしており、たびたびこれまでになかった新しい一面を見せてくれます。例えば、室内でずっとブロック遊びをしていた子が、「缶蹴りしようよ!」と呼びかけ、外に出てガンガン走っています。また決断に対して不安を抱えやすい子が逃げる側になった時、オニ2人を相手にして他全員が捕まってしまい、最後の1人という絶望的な状況になりました。しかしその子は、意を決してオニの隙をつく一瞬のタイミングを見計らって、これまで見たことのないような必死さで缶に向かって走り込んできたことがあります。さらに同じ遊びをする中で、「オニを3人にしたい」「オニがこのボールを当てられたら5秒だけ止まるルールにしたい」などの声を巡って意見が対立し、ある子が「もう絶対やらない!」とふてくされるようにして終わったのですが、次の日には何事もなかったかのように全力で走っていました。

 何気なく始めた缶蹴りオニごっこでしたが、子どもも大人もなぜか惹きつけられる不思議さがあります。これを仮に「遊びの求心性」と呼んでみたいと思います。缶蹴りオニごっこは、求心性のある遊びとして、広く人を巻き込み、何度も遊びたくなってしまう性質があるように思います。

 このような「遊びの求心性」は、どうしたら見出せるのか、これから面白い遊びを考案する上で探求していきたいなと思います。まだ考えが整理できていませんが、とりあえず思いつくままに。

・魅力的な物・道具(蹴る缶を2Lペットボトルにしてみたところ蹴りやすく、「べコ!」と良い音がして爽快。缶蹴りオニごっこの合間に、子ども達が列をなして1人ずつ蹴っていました。)

・適度な緊張感(追う—追われる)

・大人(の方がむしろ)が全力

・活躍の場が開かれている(おにごっこほど「走る」という力が求められず、「隠れる」「缶を蹴る」「缶を守る」等、様々な役割があることで子ども達が多様に活躍しやすい。)

・チャンスが残されている(牢屋システム)

・創意工夫ができる余白がある(面白くなるようなルール変更)

 

 こんなことをぐるぐる考えながら、様々な遊びを試し、遊びの奥深さに浸っていく年にしたいなと思います。

  (りょうた)

缶の代わりに試したペットボトルとベンチを柵で囲った牢屋

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