関係性の中で育つ
砂場で一緒に遊んでいた友達が部屋に入っていっても、一人で砂場に残って遊んでいる男の子(けいたくん)がいました。砂で壁を作り池のようにして水をためようとしていました。長丸の形の池の周りに、ぐるりと砂の壁が完成して水を入れていきます。でも水の勢いで壁が崩れてしまいます。すぐに砂を固め直しては、違うところが崩れ、を繰り返していました。水との追いかけっこを楽しみながらも、段々と水の量が増え決壊して新たな水たまりが出来ていくのでした。”壊れる”ことには「あ~あ」とがっかりするけれど、水の勢いで砂の壁が削れていくことや、水の勢いで穴が深くなっていくことも「うわ~!すごい!」と変化を楽しんでいる様子もありました。遊びの肝は、砂+水。完璧な池を作ることではなかったのです。
すると年齢の少し大きな男子(たいちくん)がやってきて、長い木の棒を少し遠くから差し込んで、けいたくんの作った壁を少しずつ壊していくのです。けいたくんは気付いていないのか何も言わなかったのですが、このまま大きく崩れればショックだろうと思った私は、「けいたくん、壁が壊れていくよ。たいちくんが棒で穴をあけてるよ」と言いました。すると「もう!やめてよー!」と怒り出します。たいちくんは、けいたくんならきっと怒り出すだろうとちょっかいをかけているのです。たいちくんは別の遊びを見つけてその場を離れていきました。けいたくんは砂場を離れることなく遊び続けました。
砂を掘ることがメインだった遊びを少し展開して、「砂+水」のテーマの下で、水で起こる変化を楽しむ遊びに切り替えてみてはどうだろう?と思い、「砂山にトンネルを作る時、水の力で穴が開けられるかな?」と提案してみました。すると「じゃあ洞窟を掘る!」と言って、スタッフと一緒に砂を積み上げ山を作っていきました。ほどほどにしか固めていない山なので、トンネルを掘り始めたらすぐに壁が崩れそうになりました。ひび割れを直しては掘り進めることを繰り返します。うまくいかないことに腹を立て、「もう!いらいらするー!」と怒り出しました。しかしここでも諦めず、ひらめいた方法は「棒を差し込む」という、さっきたいちくんにされた”嫌なこと事”だったのです。木の棒を少しずつ差し込んで、ついにトンネルが繋がったのです!!たいちくんが木の棒をさして壊そうとしてきたことは”嫌な事”だったのに、その棒を使って砂に穴をあける方法として自分の遊びに取り込んでいるのです。めでたく開通した細い穴に水を流して穴が大きくなっていくのを楽しみました。
”嫌な事をされた”と思うと、その出来事は私を悲しませたこととして心に残り、「嫌な事をした人」と記憶に残ってしまいます。それは一面だけで人を見ることに繋がってしまうのではないでしょうか。でも嫌だなと思ったことも学びになり、自分が困ったときに役に立った経験があれば、”人の言うことには一理あるかもしれない”と思えることもあると思うのです。そういう体験が、多面的に物事を捉える力に繋がっていくように思います。これが、『人との関係性の中で育つ』ということなのではないだろうかと思うのです。嫌な事も、悲しいこともたくさんあるけれど、見方を変えれば自分に何か教えてくれる大切なことかもしれない。そう信じて社会の中で生きていく力を子どもたちとともに育んでいきたいと願っています。(とりかい)



