テレビ放送を受けて

 先ほど、BSS山陰放送(テレポート山陰)でほどきのとっとが特集されました。

 しかし、事実やこちらの意図とは異なる形での報道がなされており、非常にショックを受けています。

 以下、今回の報道に関する私の受け止めをお伝えします。

 

  ほどきのとっとでは、社会が信じて疑わない「こうあるべき」という「学び」をほどくことを目的としています。そのために多様な子ども達が関わりながら他の人と比較できない自分の良さに気付くことで、自分の中にある確固たる「学び」をほどいてみる実践をしています。それは子どもと関わる私達自身の「学び」をほどいてみようという試みにもつながっています。

  報道では、ほどきのとっとが「発達障害」という強力なワード(テロップ)に回収されてしまい、あたかも「発達障害の支援に特化した専門施設」と映るようでした。

  確かに「発達障害の子どもを支援する」ことは必要ですし、ほどきのとっとでもそういう視点を持ちながら活動をすることで、子どもの安心感を生み出すようにしています。

  しかしそれ「だけ」の報道では、特別な支援等を受けながら発達障害の子ども「だけ」が変わっていかなければならないということになってしまい、変化を求められる子どものしんどさを強める危険性があります。これはほどきのとっとの目指す方向性と全く逆になります。

  大事にしたいことは発達障害の子どもだけでなく、周りの子ども達や私達1人1人が持っている「こうあるべき」という視点をほどいていくことです。自分自身も緩やかに変わっていく視点がなければ、特に通常学級で起こっている少数の子どもへの抑圧・排除が減っていくことはないでしょう。

 安全な立場から人々が「支援」という名の「適応」を求め続ける風潮は思ったよりも強そうです。ほどきのとっとがほどいていく社会(報道を通して見えてくる社会)の現状を改めて知りました。 

  さらに発達障害の子ども「だけ」が来ているような報道も事実と異なります。

  発達障害の子どもも来ていることは事実ですが、実際は診断の有無に関わらず、子ども達はやって来ています。

  「学びの場」や「小さな図書館」のような事業も、様々な子ども達が来られるようにするための一環です。

  今回の件について放送後、BSS山陰放送側と電話でやり取りをしました。

  最初、後日載せるYoutubeでテロップを無くすという提案を出されました。こちらからはYoutubeの話は関係のない話で、今回の報道自体への対処を強く求めました。

  その後BSS山陰放送側は、「番組内で唐突に訂正が出てくるのは…」「訂正ではなく補足で…」と譲歩するような働きかけをされましたが、最終的にこちらの要望通り「番組内での訂正」という形になりました。

  上記のようなやり取りから、正直BSS山陰放送側に謝罪の気持ちと誠意ある対応が感じられませんでした。それにも大きなショックを受けました。

  今後取材をされる際は、新奇性のある取り組みの報道を第一優先にすることで、その場で過ごしている人達を傷つけるのではなく、まずはその人達が抱える思いを十分に理解しようとし続ける姿勢を大切にされることを切に願っています。

  今回の報道で、子ども達やご家族の方にご迷惑をおかけする形になってしまい、大変申し訳ございません。

  記者の方にはこちらの意図を伝えたつもりでしたが、結果として実際と異なるような報道となってしまいました。

  しかし記者とどんなやり取りがあったにせよ、今回の責任は取材を引き受けた私にあります。

  子どもやご家族を守るべき立場の人間が、逆に傷つけてしまったかもしれないという思いがあり、自責の念に堪えません。

  今後は子どもやご家族への謝罪や説明、必要なケアをしていきたいと思っています。

  ショック、怒り、悲しみ、後悔。いろいろな気持ちが渦巻いていますが、まずは目の前の人達のことを考えて動いていきます。

  (前岡良汰)