安心の形
小学生のかおるさんは、周りから声をかけられた時に、恥ずかしさやためらいからはっきりとした返事を出すことに時間がかかります。
今日も、友達から「かくれんぼしよう?」と声をかけられた時に、戸惑った表情をしていました。
「かくれんぼってやってみたら意外と楽しいよ~」とも言ってくれましたが、その表情は変わりません。
「やりたい役をやっていいよ?」「オニだったらどう?」「かくれる方だったらどう?」
いろいろな提案が出されましたが、表情はやはり変わりません。
これは、かくれんぼはあまりやりたくないってことじゃないかな~と思っていたその時でした。
そばにいたスタッフから
「2人でオニをやってみるのはどう?」
と声をかけてもらいました。すると表情が緩んで「うん」と大きく頷きました。
私は「お~!そういう風に遊びたかったのね!」と納得がいきました。
1人で動くには「1人でできるのかな?」という不安がある。でもかくれんぼで遊びたい気持ちもある。だからこそ2人でオニをやってみることを受け入れたのでしょう。
そうしてかおるさんは、誰かといる安心感を支えにオニになれました。
その場にいた4人でかくれんぼを1回やってみて、見事全員見つけることができました。
次に友達から「かくれる方を2人でやってみる?」とかおるさんに提案がありましたが、それには頷くことはありませんでした。誰かに見つけられることよりも、誰かを探していく方が安心できたのでしょう。
しばらく4人で遊び、少なくとも全員が1回オニになりました。すると友達から「かくれる方をやってみるのはどうかな?もちろん2人で。」と聞かれると、かおるさんは「うん」と大きく頷きました。
ついにかくれる方もするんだ!
そうしてかおるさんは、誰かといる安心感を支えにかくれる人になれました。
「オニになっていた時の安心感」の積み重ねが、次の「かくれる人になる安心感」を生み出したのでしょう。一緒に数を数えて、一緒に「も~い~か~い」と言って、一緒に探す。その繰り返しが、かおるさんの不確かな不安を確かな安心に変えていったのだと思います。
またかおるさんに話しかけていた友達は、もともとオニになるのに抵抗がありました。今ではその抵抗はあまりありませんが、以前はオニ役を決めるじゃんけんに負けてもオニになることを拒絶していました。そんな友達は、かおるさんの気持ちを理解できたところもあっただろうし、かおるさんも友達からの思いが乗った言葉を受け取れたんだろうと思います。
安心の形は、好きなことをしている時、ゆったりとリラックスできる時など、個別的であり事前にある程度わかるものなのかなと思っていました。しかしかおるさんの姿を見ていると、それだけでもない気がしてきました。安心の形はわからない中でも、誰かと言葉にしたり共感したりしながら、あなたの安心はどんな形なんだろうね~と作っていくような(共同生成の)ものもあるのかなと思いました。
次は私がオニでした。「よし、かくれよう!」と言う友達の声と、かおるさんは、「うん!」という声を聞きながら、朗らかに「い~ち」と数えていました。
(りょうた)


