逆転したり、ときどき逆転しなかったり。
思っていることと逆の行動を取るのが、ストカールさんの特徴です。
「あっちいけ!」と言われたので私が離れると、「こっちに来い!」と怒られます。
外で遊んだ後に、みんながいるほどきに帰ろうとしたら、「ほどきは行かん!」と言うので、再び外で遊ぼうとすると、「ほどきに行く~!」とごねます。
発表会を間近に控え、ストカールさんは「絶対来るなよ!」と念を押すので、「わかった。ぜっっったい、行かん。」と返すと、「どうせ、来るくせに~~~」と笑みがこぼれます。
友達の物をいきなり取るのも、友達と遊びたい思いの裏返しであり、先生の言うことを無視して棚の上に上ったりするのも、先生に見てもらいたい思いの裏返しであることがほとんどです。
ストカールさんの日常は、このような逆転する姿で溢れています。
たまに逆転が起こらない
でもたまに逆転することなく、等身大のストカールさんが出てくる時があって、こちらがまごまごしてしまいます。
「貸して」「ごめん」「ありがとう」が出てくると、私は「え、、、うん。」とどう反応したらいいのか困ることがあります。「うっせえ!」「だまれ!」とか言われて、「まあまあ。」「そんな言わんでもいいじゃん。」と言い返して、お互いにぶつかっている方がいつも通りで変に安心するんですよね。
車で学校の近くにある池に向かっていた時のこと。友達がヤマメを池に逃がしたという話をストカールさんがしてくれました。私はまさかのヤマメが釣れるかもしれないとテンションが上がっていました。すると彼は、いたく真面目に答えました。
「先生に許可取らんといけんで。」
いっつも許可取らないアナタが言うんかい(笑)
池自体は公共の場なので、許可は必要ないのですが、どちらにしても律儀すぎる律義さには戸惑いますね。大人の言うことや集団の決まりを守る気持ちを、人一倍感じているのかもしれないですね。
発表会終わりのこと
今日は学校の発表会が終わってから、ほどきにやってきました。私も発表会を見に行っていたのですが、彼は最後まで舞台に上がることはありませんでした。観客席の後ろの方からこっそり様子を見て、教室に戻っていったそうです。
ストカールさんは魚を捕る道具を作りながら、
「来とったろ。」
と話しかけてきました。
「う~ん、どうだったかな~?」
「絶対おったし。」
すぐに私を見つけていたようです。続けてストカールさんは言いました。
「(発表会)出んかったで。」
何気なく言ったようで、どこか悲しみ漂う雰囲気でした。
彼の家族や私が見に来たのに出られなかったという思いや、毎年舞台に上がれていたのに、今年はできなかったという思いもあるでしょう。練習には参加できなかったけれど、先生と一緒に小道具をたくさん作ったり、練習の様子を見たり、彼なりに気持ちは発表会に向かっていたのです。
出られなかった。でも本当は出たかった。
そんな逆転する思いを私は感じ取りました。
さらに、できなかったことを言葉にするなんて、彼の誇り高きプライドを考えると滅多にないことでした。「出んかったで。」は、できなさを抱えたそのままの自分を見せてくれた言葉だったように思います。それは、逆転しない姿だったのかもしれません。
逆転したり、ときどき逆転しなかったり。
それが、ストカールさんの思いの表れ方なのです。
彼は、防虫ネットの左右に持ち手となる棒を取り付けた道具を完成させ、静かに車に乗り込みました。こんな新しい道具を発明するくらい魚捕りへの意欲があるストカールさんに私は魅力を感じます。発表会に出ようが出まいが、今のストカールさんが良いのです。
私は3種類の網を持ち出し、ストカールさんに「そんなにいる?」とツッコまれながら車に乗りました。
(りょうた)



