インクルーシブな学校のエッセンス
数ヶ月前、小学生のケンタくん(仮名)がオーストラリアに引っ越していきました。日本にいる時は学校に通うことが難しかったので、現地の学校ではどのように過ごしているのかずっと気になっていました。するとつい最近、ケンタくんのお母さんから連絡があり、彼の近況を教えてくれました。日本では学校に対して強い抵抗感を示していたケンタくんでしたが、今はなんと「楽しく」「元気に」「毎日」学校に通っているとのことでした。信じられない変わりぶりです。引っ越す前にお母さんと一緒に「大丈夫かな~…」とあれこれ心配していましたが、その必要は全くなかったようです。
下の写真に写っているのが、ケンタくんが通う学校の教室の前です(写真掲載の許可はいただいています)。


日本の学校と違いすぎて、パッと見ただけでは学校とは思えませんよね。
まず椅子や机やペンが、学校の中ではなく学校の外に置いてあることに驚きです。また同じような椅子や机が同じように並んでいるのではなく、いくつかの種類の椅子や机が点在しています。さらに1枚目に写っている茶色のトンネルのような、よくわからないけどなんだか興味をそそられるものが置いてあります。
ケンタくんのお母さんによると、この学校は幼稚園の年中さんから小学2年生までが通う公立学校だそうです。公立でこんな学校を作ることができるんですね…。
私が気になるのは、「ケンタくんがなぜ学校に通えるようになったのか」ということです。もちろん日本の文化よりもオーストラリアの文化に馴染んだからとも言えると思います。ただここは、もう少し踏み込んで考えてみたいです。なぜなら文化の違いにとどまらず、障害やジェンダーの違いも含めた「多様な子ども達が学ぶ場」という大きな大きなテーマのエッセンスが少しでも垣間見えるんじゃないかなと思うからです。
ゆとりがある学校
ケンタくんが学校に通えている理由を、私なりに2つ考えてみました。1点目は、学校にゆとりがあることです。ここでの「ゆとり」はいくつかの意味を含んでいます。まず幼稚園から小学校への接続にゆとりがあります。幼稚園から小学2年生までの学校なので、小学校に上がる時のギャップ(いわゆる小1プロブレム)で苦しくなることが少ないだろうと思います。(補足として日本でも、先進的な取り組みを行う風越学園という学校は、幼稚園から小学2年生までを前期のグループとしてカリキュラムを組んでいます。)また教室にゆとりがあります。外に椅子や机やペンがあちこちに置いてあり、教室が学校内から学校外に広がっているように感じさせてくれます。さらに関係性にもゆとりがあります。ケンタくんのお母さんによると、学校内の人達はファーストネームで呼び合っていて、全体的にリラックスした雰囲気があるそうです。校長先生は全校の子ども達と一緒にヨガをしていたとか…(笑)。ヨガを教えてくれる校長先生って親近感がわきますね。このような「ゆとり」に支えられたケンタくんは、リラックスして学校生活を送れているのでしょう。
未知のことに驚き面白がる学校
2点目は、未知のことに驚いて面白がることが大切にされていることです。ホームページに掲載されている校長先生のメッセージにこんな文がありました。
We are committed to providing a safe, inclusive setting with flexible environments where wonder and curiosity are nurtured.
内容としては、柔軟に環境を整えながら安全でインクルーシブな場所を作っていくということなのですが、最後にもう少し具体的に「wonderとcuriosityが育まれる」環境であると書かれています。最初のwonderは日本語にすると「驚き」となりますが、ここでは「驚嘆」や「感嘆」などポジティブな意味合いでの「驚き」として使われています。またcuriosityも「好奇心」と訳されますが、漢字で示されているように、「奇」妙なものを「好」む「心」です。wonderもcuriosityも私の解釈では、「未知のことに面白がって驚く」という点で共通しています。よくわからない物や出来事に対して、「えー!そうなの!?」と驚くことで自らの見方が揺さぶられつつ、「でも面白いかも」とポジティブに捉えられるような新しい見方をしてみるということなんじゃないかなと思います。写真にあった茶色のトンネルのような物体やヨガをする校長先生は、まさにwonderとcuriosityが育まれる感じがします。ケンタくんの周りには「未知のことに驚き面白がる」人達がいるからこそ、ケンタくんという新しい人の受け入れは難しいことではなく、ケンタくん自身も安心して学校に通えているのでしょう。
なにはともあれ、ケンタくんが元気であることが聞けてホッとしました。
(りょうた)


“インクルーシブな学校のエッセンス” に対して1件のコメントがあります。
コメントは受け付けていません。