「てきとう」が居場所をつくる

 ほどきでは「マンガカフェ」という企画が行われています。

 マンガが大好きな中高生達が、マンガに囲まれた図書室で、マンガにまつわるグッズを提供したり、マンガからアニメ化された音楽をBGMで流したりするなど、とにかくたくさんのマンガに彩られたカフェをするというものです。カフェとは言っても、お客さんは同じ時間帯にほどきに来ている子どもやスタッフで、内輪でこじんまりとやっています。カフェはすでに2回開催されていて、先日3回目が行われました。

 マンガカフェをしたい気持ちを持っている子ども達ですが、実行に移すには時間がかかります。まずカフェの作業をしている途中に、マンガに気を取られてマンガを読み続けてしまいます。まあ、それだけマンガ愛があるということですね~。また面と向かって話をする恥ずかしさがあったり、個々に別々の興味を上手く調整する人がいないこともあって、子ども達同士の話し合いはあまりありません。

 そんなマンガカフェの店長を紹介します。他の子ども達は店長という大きい肩書きに気が引けるところがありましたが、ある1人の子は抵抗なく店長になりました。彼は自分が店長であることを嬉しく思っている部分があり、たまに「(カフェには店長の)俺が行かんと行けんしな(笑)」と話してくれます。

 その一方で、店長は自信のなさや興味の無さから、準備をしている輪からス~ッと離れていきます。友達が黙々と準備をしている中、店長は畑作業などをしている他の人の様子を見に行きます。しばらくすると戻ってきて活動に入ってみるものの、カフェの参考になるからということで、マンガにのめり込みます。

 店長というと、周りの人達を引っ張っていったり、仕事をこなしていくイメージがあります。しかし彼は違います。その場からふら~っと離れたり、マンガを読んでいたり、マイペースです。それでも彼は店長なのです。なぜなのでしょうか。

 さて他の子はというと、第3回マンガカフェに向けて、お客さんへのお土産用に、マンガにまつわるグッズを完成させていました。あとは肝心の飲み物や食べ物ですが、まだどうするか決めていません。カフェと言いつつ、飲食物はグッズ作成ほど乗り気でないようなのです。どうしようか…という空気感が流れます。するとスタッフから「カフェメニューはお茶とかほどきにあるものを出すってことにして、もうオープンしちゃう?」という背中を押す声掛けで、子ども達も賛成。

 その時、ある子がボソッと「でも店長がいないから、店長が戻ってくるまで待つ」と言いました。店長はその場にいなくても、周りの子達に必要とされていたようです。

 少しして店長が戻ってきました。スタッフが「店長、もう始めようと思うけど準備良い?」と声をかけると、

「うん、わかった。・・・座布団、いらんかな?」。

 カフェをスタートさせるぞ!という店長の心づもりが見えた瞬間でした。「OK!店長、一緒に準備しよう!」「店長よろしく!」というスタッフの応答に、店長は照れ笑いしながら座布団を取りに行きました。

 彼が店長であり続けられる理由。それは「テキトーさ」と「適当さ」にあるように思いました。

 「テキトーさ」とは、気楽な参加のしやすさです。活動に入ってきても良いし、その場を離れても良いので、参加の仕方にゆるさがあります。そして「店長としての仕事」が予め決まっていないゆるさがあります。活動に入ったり入らなかったりのあいまいさや、座布団を気にしたりする彼の振る舞いが、店長の仕事として形づくられるような感じですね。最初から「店長の仕事」が決まっているのではなく、その場にいる人達との関わりの中で、後から立ち上がってくるものなのでしょう。

 もう1つの「適当さ」とは、何もしていないように見える彼が店長でいてくれることが適しているということです。マンガカフェをスタートさせる時に店長が必要とされたように、同じ何回かマンガカフェを重ねる中で、テキトーだから店長はいてもいなくても良い存在ではなく、周りの人からいてほしいと思われる存在になっていたのです。そして彼自身も自分が店長だという思いがあり、カフェのスタート直前に自発的に座布団を持ってこようとしたように、店長なりに準備をしようとしていたのです。

 いよいよオープンの時。

 店長は「『準備できたよ』でいいかな?」と、他の人に声をかける言葉をスタッフに確認した後、「準備できたよ~」の言葉でマンガカフェがオープンしました。店長はBGMを流します。周りから

「あれ?店長、BGM流してる?」

と聞かれると、店長は

「うん、流してるよ」と言いますが、全く聞こえていません。

 音楽機器を見てみると、確かに再生はされているのですが、恥ずかしさから無音状態で流していたのです!

 いや、それは流してると言えるのか~???(笑)

 「全然聞こえんや~ん!(笑)」というツッコミに、照れ笑いをしながらもどこか満足気な店長は、少しだけ音量を上げました。

(りょうた)

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