ストカールな日常

 ポケットに手を入れてニヤニヤしながらやってきたストカールさん。

 にやつきを出さないように鼻を大きくして口を開けて平静を装おうと頑張っていますが、どうしてもにやついてしまうんですよね。彼の素直さがよく表れています。ポケットの中に手を入れているのは、小銭を握りしめているからでしょう。

「中学校行こ。」

 こう言い出したら、彼のしたいことはほぼほぼ分かります。

「ジュース買いたいんだろう?」

「違うし(笑)」

 中学校の近くにある自販機までの道のりを、久しぶりに2人だけの散歩です。

 歩き始めてすぐストカールさんが何かを発見しました。

「あ!!!」

 何を見つけたんだろう?

「ふ!!!」

 え?

「ふがある!!!」

 どういうこと???

 ストカールさんの指さしたところを見に行きました。

 雪が『ふ』の形ってこと!?なるほど!!!

 ここで『ふ』を見つける感性がうらやましい。

 その後も、急に走り出したりすることはなく、歩きながらずっと話をしていました。

「なあ。北海道では何が釣れるでしょう?」

 ストカールさんから問題が出されます。

「え~と、、、ヒラメ?」

「じゃ~あ~、岩手は何が釣れるでしょう?」

「いや、答え教えてよ(笑)」

「岩手は何でしょう?」

「マグロとか?」

「じゃ~あ~、島根は何でしょう?」

 答えがあるのかないのか分からない問題に、答え続けていました。

「なあ。海に行きたい。」

「海か~。今年も海に釣りに行くか~。」

「潜る。」

「潜って魚捕るの?」

「うん。船に乗る。」

「船に乗ってから潜って魚捕るの?」

「うん。」

「漁師じゃん!じゃあ船の免許取らないと。」

「まえおかが免許取って、俺が魚捕る。」

「そうなの?ストカールくんが免許取ったらええやん。」

「子どもは取れんだろ。」

「取れるかもよ~?」

「じゃあ、まえおかが免許を取って、俺が運転して魚を捕る。」

「いいとこ全部持っていくやん(笑)」

 別の日。

 もうすぐストカールさんがほどきに来るという時間帯に電話がありました。ストカールさんが家にあった自転車に乗って外へ出ていってしまい、ほどきへ向かったかもしれないとのことでした。「あちゃ~」と思いながら、私は車を出して捜索に向かいます。

 車を少し走らせたところで、自転車を握りしめてお母さんと押し問答をするストカールさんを見つけました。だんだんとイライラが高まっていき、お母さんに対して反抗的になっていきます。

「クソガキ!!!」

 いや、それはブーメランになるやん。

 私は自転車のカゴにサッカーボールが入っていたのに気づき、「ほどきでサッカーしようで。ボール持って、車に乗ろうよ。」と声をかけました。ストカールさんの気持ちが少しずつボールの方へ向いていき、ボールとともに車に乗ってくれました。

 ほどきへ向かっていると、ストカールさんが口を開きます。

「休んどったろ?」

 実は前の週、私の体調が悪くなり、ほどきを休んでいたのです。

「うん、風邪ひいてた。」

「うそだ。」

「本当。家に帰って寝てた。」

「うそだな。」

「本当だって。」

 私が休んだ日、ストカールさんが私のためにほどきでパンケーキを作ってくれたのを思い出しました。

「そういえばパンケーキ作ってくれたよね。美味しかったわ~。ありがとう。」

「違うで。パンに・・・、卵と・・・、バターと、砂糖入れた。」

 手の込んだものを作ってくれたということか~。優しいなあ。

(りょうた)